英国の65歳以上の高齢者の就業実態調査から見えてくる5つの事実と日英の高齢者就業比較等の意義

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英国の国家統計の中枢機関である「Office for National Statistics(ONS) 」が最近時に興味深い統計結果を公表した。「就業する65歳以上の高齢者の実態調擁立査から見えてくる5つの事実」である。10月1日の国連(UN)の「国際高齢者の日( International Day of the Older Person 」を記念して公表したものである。

 その最大のポイントは、1992年3月現在で男女平均で5.5%であった就業率が2016年5月~7月の調査では10.4%と約2倍になったと大きく取り上げている点である。

 この数字は、わが国の総務省統計局の調査結果と比較すると極めて重要な問題点が浮かび上がってくる。すなわち、欧米特にEU加盟国中では比較的に高齢者の就業率が高いとされるイギリスの例とわが国の比較は、これからのわが国の福祉制度の根本的見直しの好材料となろうし、働かざるを得ないわが国の高齢者の経済的貧しさの証左でもある。すなわち、わが国の高齢者の高い就業率は年金制度の貧困さの裏返しの問題でもある。労働政策、受給年齢の引き上げなど年金制度の破綻論の前提とすべき問題でもあるし、この分野の研究者や行政機関が無言なまま、あるいは放置していること自体、筆者としても信じがたい。(note1)

 すでに、わが国の経済力は右肩上がりでもないし、企業の国際競争力もはっきり低下しており、国家財政も破綻直前で2020年東京オリンピック以降は、「倒産国家」の仲間入りとなることは間違いない。

1.英国の高齢者雇用制度の改正経緯

2006年以降、2回にわたり大改正している。2011年JETROユーロトレンドの「2011年英国雇用法改正解説」から一部抜粋する。

(1) 2006年雇用平等(年齢)規則(The Employment Equality (Age) Regulations 2006)( 以下、「年齢規則」という。)は、平等取扱いに関するEU雇用枠組み指令の年齢に関する部分を実施するために導入された。年齢規則は、雇用における年齢差別に関係する指令の該当部分をイギリスの法律に取り入れている。年齢規則は新しい2010年平等法に組み込まれており、当該部分は2010年10月1日に施行される。

年齢規則の重要な特徴の一つは、65歳の原則的退職年齢の導入と、客観的に正当化ができない限り65歳未満の強制的退職の禁止であった。原則的退職年齢は年齢を理由にした平等取扱いの一般原則の例外である。したがって雇用主は65歳以上の被用者を、所定の退職手続に従えば、不公正解雇または年齢差別であるとみなされることなく強制的に退職させることができる。

(2) 2011年の退職法改正

65歳の原則的退職年齢による退職は2011年10月1日に完全に終了し、雇用主は新規の退職予定の予告を4月6日以降出すことができなくなる。

・(いかなる年齢であれ)退職による解雇は2011年10月1日以降もまだ許されるが、客観的に正当であることを証明できる場合に限る。

・2011年4月6日以前に予告され2011年10月1日以前に効力を生じる退職には移行措置が適用される。2011年4月6日前に予告されても10月1日以降に効力を生じる予定の退職は、(客観的に正当であることを証明できない限り)有効ではなくなる。退職による解雇に適用される現行の手続き要件は、年齢規則の別表6に定められているが、廃止されることになる。

2011年4月以降、労働者全体に強制的退職年齢を定めたい雇用主は、客観的に正当であることを証明できる場合にしか定めることはできなくなる。そのような雇用主はこの差別が「釣り合いが取れており」(‘proportionate’)で「正当な目的」(‘legitimate aim’)に寄与することを示さなければならない。強制的退職年齢は、雇用主にその措置に代わる合理的な代替案がない場合にのみ、釣り合いが取れたものとなる。

2.今回のONSの統計結果のポイント

(1) 高齢者の就業実態に関する記録が最初に収集された時から比較して、65歳以上の働く割合は約2倍になった。

2016年5月~7月までの間において65歳以上で就職している割合は人口の10.4% (1,190,000人)であった。2006年の同期間では、65歳以上で就職している割合は6.6% (609,000人)であった。

また、調査が最初に始まったときである1992年3月~5月の間では、5.5% (478,000人)だけが就業していた。

*英国の65歳以上の高齢者の1992年3月~5月の間の就業率からそれ以降の2016年5月~7月の間の就職率推移(図1)

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(2) 2016年5月~7月の間の英国の65歳以上の就業者数は男性742,000人、女性448,000人である。

ONSの労働力調査(Labour Force Survey)によれば、これは65歳以上で1992年3月~5月(記録調査が最初に始まったとき)の3か月間に就職していた男性301,000人と女性177,000人に同期間の調査データに匹敵する。

65歳以上の人々の就業率の向上に貢献している可能性がある主たる要因としては、前述のとおり従業員が65歳に達したら、雇い主は強制的に雇用を一度やめることを禁止する法律であり、同法は、2011年10月に実施された。

*多くの英国の65歳以上の男性(青線)と女性(赤線)は、1992年3月~5月から2016年5月~7月の間に英国内で就業率を引き上げている(図2)

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(3) パートタイムの自営業者は、パートタイムの従業員より高齢就業している傾向にある。

65歳以上のパートタイム自営業者の割合は、2001年の14%から2015年には22%まで引き上がった。

70歳以上の自営業のパート従業員の割合は、2001年はほぼ3分の1(39.68%)であったが、2015年には49.3%になった。

*2001年と2015年の間のパートタイムの従業員とパートタイムの自営業者の年齢分布(図3)

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(4) 年金制度など英国経済は、2039年までにますます高年齢労働者に依存するようになる。

英国の既存の雇用法の下で、公的年金受給資格年齢(State Pension Age :SPA)以降の受給者数は、2015年中頃の1,240万から2039年中頃までには1,650万まで、32.5%増加することが予測されている。

これは、2039年中頃までの25年間以内に公的年金の受給者数が1960年代『ベビーブーム』で生まれた人々のより高い数字を反映する結果である。

一方、同期間の間、生産年齢(16歳からSPAまでの年齢層)の人数は、2015年中頃の4,040万から2039年中頃までに4,460万まで10.3%上がると予測されている。

生産年齢1千人に対する年金受給資格のある年齢の人々の数の比率(老年従属人口指数:Old Age Dependency Ratio:OADR)は、1980年代から2006年頃までは300程度で安定していたが、ポスト第二次世界大戦ベビーブームで生まれる女性がSPAに達したので2007年から2009年にかけて引き上がった。

SPAの引き上げが行われない場合でも、2039年には英国のOADRは487に上がる。しかし、計画的なSPAの引き上げの結果、現在の法律のもとで2010~2046年に起こることとしては、 2039年の1,000人の生産年齢ごとにに対するSPA以降の高齢者数は370のレベルが維持されると予想する。

*英国のSPAの引き上げに有無の結果で見るOADR値の推移予想(図4)

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なお、OADRの増加は、生産年齢のより若い人々がSPA以上の高齢者のより大きい人口を支えるためにいわゆる逆三角形になることを意味する。

(参考)OADRの日英比較

ONSが使っているOADRの数字(370, 487)はわが国と比較するためIndexMundiの数値に置き換えて日英を比較した。その意味で正確性に欠く点はあろうが、傾向値を見るうえでは意味があると考える。

*英国のOADRの推移グラフIndexMundiデータから引用

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*日本のOADRの推移グラフ IndexMundiデータから引用

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この2つのグラフを見てまず感じる点は、1970年~2005年頃までがわが国の方が英国より低いすなわち1千人の生産年齢層からする高齢者の数は低かったが、2010年以降は急速に上昇傾向にある点である。換言すると「老年従属人口指数(65歳以上の人口に対する生産人口の比率)は2010年には40%を下回る水準であったものが2080年には90%近くまで上昇する。」ともいえる。

他方、英国はこれまではわが国に比してやや高かったがこの10年来の傾向はやや上昇傾向にはあるものの、日本に比して増加傾向は急ではない。英国においても高齢化は進んでいることはわが国と同様であるが、生産年齢層の員数も安定していることと考えられる。

SPAの引き上げが行われない場合でも、2039年には英国のOADRは487に上がる。しかし、計画的なSPAの引き上げの結果、現在の法律のもとで2010~2046年に起こることとしては、します、予想しますその – 2039年の1,000人の生産年齢ごとにに対するSPA以降の高齢者集は370のレベルが維持されると予想する。

OADRの増加は、生産年齢のより若い人々がSPA以上の高齢者のより大きい人口を支えるためにいわゆる逆三角形になることを意味する。

(5) 65歳以上の働く人々の世界は、生産年齢である16歳~64歳のそれらと類似している。

*2011年の英国の国勢調査において、各産業分野ごとの16歳から64歳以上の就労調査によると、英国内6つの産業分野でみると、ちょうど両方の年齢層の雇用は60%以上を占める。(図5)

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3.わが国の統計機関の公表の迅速性、縦割りでない経済や福祉政策の立案の必要性

英国ONSの統計結果は興味深いし、わが国でも同様の分析が期待したいところである。広く国民が知りうる一般的な景気動向調査は、GDP予測、日銀短観、有効求人倍率等であるが、これらはあくまで景気動向の予測調査で年金制度改革等福祉制度改革と直接に連結するものではない。

一部の専門家のみによる解析だけでなく、広く国民が理解できる内容をもって解説する場がメデイアも含めて必要であると考える。

一方、ONSの調査範囲だけでなく機能や公表の迅速性はわが国と比較してかなり進んでいる。わが国の総務省統計局も今回のONS統計とほぼ近い調査を行っているが、一番直近のデータは2014年である。この2年の差は大きい。

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(note1) 海外社会保障研究 Winter 2012 No. 181 丸谷 浩介「イギリスにおける年金支給開始年齢の引き上げと「定年制」の廃止」が問題点を丁寧に追っている。

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