英国・法改革委員会「役所の職権濫用行為」検討プロジェクトの第二次諮問書とわが国の現状から見た課題

 英国の「法改革委員会(Law Commission)」9/6(25) (note1)は、2016年初めに行った最初の意見諮問に続き、2016年9月5日に第2段となる「諮問書(REFORMING MISCONDUCT IN PUBLIC OFFICE :A Consultation Paper )」(No.229:全224頁)9/6⑤を公表した。その諮問期限は、2016年11月28日まで実施される。

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2016年9月5日に本委員会は、法改革のための選択肢を含む諮問書の公表をもって諮問手続きの第2段階を開始した。最終報告書は、2017年中に公表する予定である。

 筆者が、この問題を取り上げた背景は、わが国でも同様の問題が大分県警のビデオ監視カメラ捜査事件で起きたからである。わが国では刑法193条で「公務員職権濫用罪」(note2)、同194条で「特別公務員職権濫用罪」(note3)が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条(note4)、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条(note5)、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条(note6)があげられる。

 特に大分県警事件は、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に抵触するだけでなく、刑法194条にも関わる問題であろう。(note7)

 法改革委員会の諮問書にも明記されている通り、役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

 その意味で、この問題についての英国の取り組みの解析は、わが国においても他山の石とすべき問題と考える。

1.法改革委員会の役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)の刑法上の検討の経緯

(1)初回の諮問等をめぐる経緯

「役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)に関する諮問文書1」

役所の職権濫用行為にかかる現行刑法の問題に関する検討の背景理由書面、すなわち代替犯罪(alternative offences) としてのギャップと重複問題と同様に、不確実性の領域で発生する問題を強調的に表示した。

本委員会は、著名なスピーカーと論議を行うシンポジュームとともに、2016年1月20日に「諮問文書1(Misconduct in Public Office: Issues Paper 1)」9/6⑨を発刊し、この問題の諮問フェーズを立ち上げた(我々は、その日からツィッターで内容を公開している)。この段階では、現在の法律とその問題点に焦点を当てた。同諮問文書とシンポジウムの目的は、特定の問題に基づいた議論を刺激するための機会を我々に提供し、同犯罪を実際扱う実務家や専門家と交流の場とするものである。

(2)本委員会のプロジェクト目的

本委員会の法改革の目標は、役所の職権濫用行為にかかる既存の犯罪を廃止、維持、修正再規定または改正する必要があるか否かの決定と、さらに改革のために何らかの手法を追求する点にある。

役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

(3)犯罪の定義とその問題点(The offence and its problems)

「役所の職権濫用」は、コモンロー(note8)上の犯罪であり、いかなる制定法にも定められていない。一方、その最高刑は終身拘禁刑(life imprisonment)である。その犯罪行為とは、公務員が公務員(office holder)に対する国民の信頼の濫用した程度において,合理的な釈明や正当化事由なし(without reasonable excuse or justification.)に、故意に自身の義務を怠りかつ/または故意に職権を濫用したことをいう。

歴史的に見て、公務員の違法行為を犯罪として考慮する他の適切な方法がなかった。今日、このような不正行為は一般に別の狭義でかつ明確に定義された刑事犯罪(criminal offence)に該当しよう。

この犯罪は、定義が曖昧で広く考えられており、また政府、控訴裁判所、メデイアや法学者によって最近批判の対象とされている。

社会統計では、有罪につながるそれらの告発が極めて少ない一方で、多くの人々は役所の職権濫用は起訴されるべきという点を示唆している。その1 つの可能な理由は、犯罪の明確な定義のない判決のつ言い渡しは困難であることである。

本委員会は、いくつかのこの問題にかかる「犯罪の定義」問題を、以下のとおり明確化した。

①「役所(Public office)」は、明確な定義を欠いているが、なお犯罪の重要な要素である。この曖昧さは、その犯罪の解釈・適用に重大な困難をもたらす。

②公職権者であるための義務の類型が十分に定義されていない。これらの特定の義務の違反を証明するために不可欠であるかどうかも、判例法上不明確である。

③「国民の信頼の濫用(abuse of the public trust)」が、この犯罪の成立判断の「しきい値要素」として重要な点である一方で、内容が曖昧で、捜査官(investigators)、検察官(prosecutors)、陪審員(juries)に適用するのが困難である。

④犯罪を証明する必要な「違反の要素(fault element)」は、状況によって異なる。これらは、一般的でなく、無節操(unprincipled)な立場にある。

⑤「合理的な釈明や正当化事由がなく(without reasonable excuse or justification)」が犯罪の要素として明らかであったとしても、それは自立した防御または定義された要素として機能するかどうかは不明である。

(4)今回の諮問にかかる関連文書の一覧を添付する。なお、筆者の責任でリンクを貼った。

【添付文書】

① Reforming Misconduct in Public Office consultation PDF, 1MB (全224頁)

② Reforming Misconduct in Public Office consultation summary PDF, 164kB (全19頁)

Diwygio Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus Crynodeb PDF, 188kB (全20頁) 

④ Reforming Misconduct in Public Office Appendix PDF, 110kB (全10頁)

⑤ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1 PDF, 748kB 

⑥ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Summary (English) PDF, 182kB

⑦ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Materion Papur 1 – Y Gyfraithbresennol PDF, 168kB (全18頁)

⑧ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Overview (English) PDF, 69kB (全2頁)

Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Papur Materion 1 – Y Gyfraith Ar Hyn O Bryd Trosolwg PDF, 72kB (全3頁)

Appendix A – History of the Offence of Misconduct in Public Office PDF, 260kB

Appendix B – Misfeasance in Public Office (A Paper by Mark Aronson) PDF, 225kB

Appendix C – Misconduct in Public Office and the ECHR PDF, 170kB

Appendix D – Spreadsheets relating to Misconduct in Public Office PDF, 164kB

Appendix E – Previous Reform Proposals PDF, 146kB

Appendix F – International Comparisons PDF, 260kB

(5)代替犯罪(alternative offense)にかかる起訴以外による陪審評決( Alternative verdicts )の意義

英国内の資料を調べてみたが、これといった資料は見当たらなかった。以下の内容につき、自信はないが、参考までにまとめてみた。

「1967年刑法(Criminal Law Act 1977)」の第6条(3)項(note9)に従い、陪審は以下の場合、起訴に関して被告を代替犯罪(alternative offense)として有罪であるとする判決を下しうる。

①被告は、反逆罪(treason)または殺人罪(Murder)以外のいかなる犯罪に関する起訴に関して裁判にかけられうる。;

②陪審は、被告に対し起訴に基づく有罪であるとする評決は下さない。

③明白または暗に刑事法院(Crown Court) (note10) の管轄権に入るかまたは別の犯罪の起訴の申し立てによる。

略式起訴犯罪(刑法第40条の略式起訴犯罪(summary offense)が当てはまる)は、この定義に入るし、刑事裁判所によって判決を下されるかもしれない。同裁判所は、治安判事裁判所(magistrates court)の宣告権限に制約される。

実際に身体の傷害を引き起こす損傷(wounding)、暴行(assault)や身体の傷害を引き起こす人種的加重暴行(racially aggravated assault)や一般の加重暴行が、代替評決の考慮に至るかもしれない最も明らかなものであるが、他方で性犯罪や暴力を伴う暴行についても考慮することも重要である。

2.わが国の刑法193条等や特別刑法等で見る公務員職権濫用罪に関する厳格な運用上の課題

わが国では、刑法193条で「公務員職権濫用罪」、同194条で「特別公務員職権濫用罪」が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条があげられる。

他方、その運用の厳格性はどのように担保されていると考えるべきか。京都産業大学准教授の深尾正樹氏の論文や昭和57年1月28日公務員職権濫用に関する最高裁判決昭和54年12月26日の公務員職権濫用被告事件の東京高裁判決等材料は多い。

しかし、より運用面の取り組むべき課題は多いと考える。法務省・人権養護推進審議会資料「主な人権侵害類型と被害者の救済にかかわる制度等」を見ておく。

「公権力による侵害の項目で「*拘禁施設内における人権侵害等は,その密室性により発覚しにくい場合があり,立証・資料収集が困難であるとの指摘がある。

*内部監査・監察においては,必ずしも正確な調査と情報開示が期待できない場合があるとの指摘がある。」というコメントがある。

この議論は入り口論のみと思うのは筆者だけであろうか。

******************************************************************:

(note1)「Law Commission」を「法改革委員会」と訳すのはおそらく筆者のみであろう。その理由は筆者のブログ「英国法務省の「検死官規則(Coroners Rules 1984)」の一部改正の背景と司法改革の観点からみた意義」を参照してほしい。

なお、Law Commissionサイトで基本的な役割を見ておく。「法改革委員会は1965年「法改革委員会法」に基づき創設された独立制定法機関であり、公正、近代化、単純化および費用面の効率化等の観点から、必要に応じ法改革に関する見直しや勧告等を行う。」

(note2) 刑法193条:公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。

(note3) 刑法194条:裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。

(note4) 「破壊活動防止法(昭和27年7月21日法律第240号)」(公安調査官の職権濫用の罪)

  •  公安調査官がその職権を濫用し、人をして義務のないことを行わせ、又は行うべき権利を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁こに処する。

(note5) 「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年12月7日法律第147号)」

(公安調査官の職権濫用の罪)

第42条  公安調査官がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

(警察職員の職権濫用の罪)

第43条  警察職員がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

(note6) 「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」

第30条 捜査又は調査の権限を有する公務員が、その捜査又は調査の職務に関し、電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第百七十九条第一項 又は有線電気通信法 (昭和二十八年法律第九十六号)第十四条第一項 の罪を犯したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(note7) 小坂正則「基本的人権無視の警察国家体制が着実に先行実施されている」

「この国は「盗撮・盗聴」の暗黒社会が完成しつつある」が比較的詳しく論じている。ただし、より専門的な視点からの問題の指摘論文を期待したい。

(note8) 「コモンロー」の詳しい説明は省略するが、次の解説がわかりやすい。

衡平法とは、イギリスで大法官(Lord Chancellor)が与えた個別的救済が集積したことにより確立された法原則を意味する。エクイティ(equity)とも呼称される。英米判例法のうち、イギリスにおいて1875年まで存続した大法官裁判所(Court of Chancery)が定立した法であり、それ以降発達していったとされる。

沿革を下記に紹介する。

①イギリスでは古来からコモン・ロー裁判所による判決の集積である判例法をコモン・ローと呼称し、コモン・ローは民事、商事、刑事の分野で発展してきた。

②ところが、イギリスと欧州各国との交易が盛んになると、その厳格性からコモン・ローでは対応しきれない事案が登場し、新法分野である信託法に関する事案については、大法官が個別に救済を与えるという取扱いをすることとなった。

③コモン・ローが金銭賠償を民事上の救済方法とするのに対し、衡平法は、信託(trust)、特定履行(specific performance)、差止命令(injunction)など柔軟な救済方法を発達させていった。

沿革からわかる通り、衡平法はコモン・ローを補完し、法の具体的妥当性を実現する機能を有するものであるといえる。

なお、現在では、コモン・ローと衡平法の訴訟上の手続きはほぼ統一されているが、両者はいまだ別の法体系として存在している。(弁護士ドットコム「衡平法」から抜粋)

(note9) 1967年英国刑法第6条3項 の内容をあげておく。

(3)Where, on a person’s trial on indictment for any offence except treason or murder, the jury find him not guilty of the offence specifically charged in the indictment, but the allegations in the indictment amount to or include (expressly or by implication) an allegation of another offence falling within the jurisdiction of the court of trial, the jury may find him guilty of that other offence or of an offence of which he could be found guilty on an indictment specifically charging that other offence.

 

(note10) CrownCourtの解説(「イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度」から一部抜粋)

正式起訴手続に係る刑事事件の第一審(ただし、必ず治安判事裁判所の予備審問を経る、科刑のために治安判事裁判所から付託された事件の科刑手続及び治安判事裁判所の刑事事件に関する上訴審を管轄する。第一審としては、中間的犯罪のうち被告人が陪審裁判を選択したときなど、及び全ての正式起訴状による刑事事件(正式起訴事件)を取り扱い、被告人が争った場合は、陪審制により裁判を行う。被告人が有罪の答弁をした場合には、陪審によることなく、直ちに量刑手続に移行することとなる。

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Copyright © 2006-2016 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author.

 

 

2016年9月5日に本委員会は、法改革のための選択肢を含む諮問書の公表をもって諮問手続きの第2段階を開始した。最終報告書は、2017年中に公表する予定である。

 

筆者が、この問題を取り上げた背景は、わが国でも同様の問題が大分県警のビデオ監視カメラ捜査事件で起きたからである。わが国では刑法193条で「公務員職権濫用罪」(note2)、同194条で「特別公務員職権濫用罪」(note3)が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条(note4)、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条(note5)、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条(note6)があげられる。

 

特に大分県警事件は、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に抵触するだけでなく、刑法194条にも関わる問題であろう。(note7)

 

法改革委員会の諮問書にも明記されている通り、役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

その意味で、この問題についての英国の取り組みの解析は、わが国においても他山の石とすべき問題と考える。

 

  • 法改革委員会の役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)の刑法上の検討の経緯

 

(1)初回の諮問等をめぐる経緯

「役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)に関する諮問文書1」

役所の職権濫用行為にかかる現行刑法の問題に関する検討の背景理由書面、すなわち代替犯罪(alternative offences) としてのギャップと重複問題と同様に、不確実性の領域で発生する問題を強調的に表示した。

 

本委員会は、著名なスピーカーと論議を行うシンポジュームとともに、2016年1月20日に「諮問文書1(Misconduct in Public Office: Issues Paper 1)」9/6⑨を発刊し、この問題の諮問フェーズを立ち上げた(我々は、その日からツィッターで内容を公開している)。この段階では、現在の法律とその問題点に焦点を当てた。同諮問文書とシンポジウムの目的は、特定の問題に基づいた議論を刺激するための機会を我々に提供し、同犯罪を実際扱う実務家や専門家と交流の場とするものである。

 

(2)本委員会のプロジェクト目的

本委員会の法改革の目標は、役所の職権濫用行為にかかる既存の犯罪を廃止、維持、修正再規定または改正する必要があるか否かの決定と、さらに改革のために何らかの手法を追求する点にある。

 

役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

 

(3)犯罪の定義とその問題点(The offence and its problems)

「役所の職権濫用」は、コモンロー(note8)上の犯罪であり、いかなる制定法にも定められていない。一方、その最高刑は終身拘禁刑(life imprisonment)である。その犯罪行為とは、公務員が公務員(office holder)に対する国民の信頼の濫用した程度において,合理的な釈明や正当化事由なし(without reasonable excuse or justification.)に、故意に自身の義務を怠りかつ/または故意に職権を濫用したことをいう。

 

歴史的に見て、公務員の違法行為を犯罪として考慮する他の適切な方法がなかった。今日、このような不正行為は一般に別の狭義でかつ明確に定義された刑事犯罪(criminal offence)に該当しよう。

 

この犯罪は、定義が曖昧で広く考えられており、また政府、控訴裁判所、メデイアや法学者によって最近批判の対象とされている。

社会統計では、有罪につながるそれらの告発が極めて少ない一方で、多くの人々は役所の職権濫用は起訴されるべきという点を示唆している。その1 つの可能な理由は、犯罪の明確な定義のない判決のつ言い渡しは困難であることである。

 

本委員会は、いくつかのこの問題にかかる「犯罪の定義」問題を、以下のとおり明確化した。

 

①「役所(Public office)」は、明確な定義を欠いているが、なお犯罪の重要な要素である。この曖昧さは、その犯罪の解釈・適用に重大な困難をもたらす。

 

②公職権者であるための義務の類型が十分に定義されていない。これらの特定の義務の違反を証明するために不可欠であるかどうかも、判例法上不明確である。

 

③「国民の信頼の濫用(abuse of the public trust)」が、この犯罪の成立判断の「しきい値要素」として重要な点である一方で、内容が曖昧で、捜査官(investigators)、検察官(prosecutors)、陪審員(juries)に適用するのが困難である。.

 

④犯罪を証明する必要な「違反の要素(fault element)」は、状況によって異なる。これらは、一般的でなく、無節操(unprincipled)な立場にある。

 

⑤「合理的な釈明や正当化事由がなく(without reasonable excuse or justification)」が犯罪の要素として明らかであったとしても、それは自立した防御または定義された要素として機能するかどうかは不明である。

 

  • 今回の諮問にかかる関連文書の一覧を添付する。なお、筆者の責任でリンクを貼った。

 

【添付文書】

① Reforming Misconduct in Public Office consultation PDF, 1MB (全224頁) 9/6⑤

② Reforming Misconduct in Public Office consultation summary PDF, 164kB (全19頁) 9/6⑥

③ Diwygio Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus Crynodeb PDF, 188kB (全20頁) 9/6⑦

④ Reforming Misconduct in Public Office Appendix PDF, 110kB (全10頁) 9/6⑧

⑤ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1 PDF, 748kB  9/6⑨

⑥ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Summary (English) PDF, 182kB 9/6⑩

⑦ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Materion Papur 1 – Y Gyfraithbresennol PDF, 168kB (全18頁)9/6⑪

⑧ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Overview (English) PDF, 69kB (全2頁)9/6⑫

⑨ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Papur Materion 1 – Y Gyfraith Ar Hyn O Bryd Trosolwg PDF, 72kB (全3頁)9/6⑬

Appendix A – History of the Offence of Misconduct in Public Office PDF, 260kB 9/6⑭

Appendix B – Misfeasance in Public Office (A Paper by Mark Aronson) PDF, 225kB 9/6⑮

Appendix C – Misconduct in Public Office and the ECHR PDF, 170kB 9/6⑯

Appendix D – Spreadsheets relating to Misconduct in Public Office PDF, 164kB 9/6 ⑰

Appendix E – Previous Reform Proposals PDF, 146kB 9/6⑱

Appendix F – International Comparisons PDF, 260kB 9/6 ⑲

 

  • 代替犯罪(alternative offense)にかかる起訴以外による陪審評決( Alternative

verdicts )9/6(22)の意義

英国内の資料を調べてみたが、これといった資料は見当たらなかった。以下の内容につき、自信はないが、参考までにまとめてみた。

 

「1967年刑法(Criminal Law Act 1977)」9/6(38)の第6条(3)項(note9)に従い、陪審は以下の場合、起訴に関して被告を代替犯罪(alternative offense)として有罪であるとする判決を下しうる。

①被告は、反逆罪(treason)または殺人罪(Murder)以外のいかなる犯罪に関する起訴に関して裁判にかけられうる。;

②陪審は、被告に対し起訴に基づく有罪であるとする評決は下さない。

③明白または暗に刑事法院(Crown Court) (note10) の管轄権に入るかまたは別の犯罪の起訴の申し立てによる。

 

略式起訴犯罪(刑法第40条の略式起訴犯罪(summary offense)が当てはまる)は、この定義に入るし、刑事裁判所によって判決を下されるかもしれない。同裁判所は、治安判事裁判所(magistrates court)の宣告権限に制約される。

 

実際に身体の傷害を引き起こす損傷(wounding)、暴行(assault)や身体の傷害を引き起こす人種的加重暴行(racially aggravated assault)や一般の加重暴行が、代替評決の考慮に至るかもしれない最も明らかなものであるが、他方で性犯罪や暴力を伴う暴行についても考慮することも重要である。

 

  • わが国の刑法193条等や特別刑法等で見る公務員職権濫用罪に関する厳格な運用上の課題

わが国では、刑法193条で「公務員職権濫用罪」、同194条で「特別公務員職権濫用罪」が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条があげられる。

 

他方、その運用の厳格性はどのように担保されていると考えるべきか。京都産業大学准教授の深尾正樹氏9/6(34)の論文や昭和57年1月28日公務員職権濫用に関する最高裁判決9/6(33)、昭和54年12月26日の公務員職権濫用被告事件の東京高裁判決9/6(35)等材料は多い。

しかし、より運用面の取り組むべき課題は多いと考える。法務省・人権養護推進審議会資料「主な人権侵害類型と被害者の救済にかかわる制度等」9/6(37)を見ておく。

「公権力による侵害の項目で「*拘禁施設内における人権侵害等は,その密室性により発覚しにくい場合があり,立証・資料収集が困難であるとの指摘がある。

*内部監査・監察においては,必ずしも正確な調査と情報開示が期待できない場合があるとの指摘がある。」というコメントがある。

この議論は入り口論のみと思うのは筆者だけであろうか。

 

******************************************************************:

(note1)「Law Commission」を「法改革委員会」と訳すのはおそらく筆者のみであろう。その理由は筆者のブログ「英国法務省の「検死官規則(Coroners Rules 1984)」の一部改正の背景と司法改革の観点からみた意義」9/6(24)を参照してほしい。

なお、Law Commissionサイトで基本的な役割を見ておく。「法改革委員会は1965年「法改革委員会法」9/6(30)に基づき創設された独立制定法機関であり、公正、近代化、単純化および費用面の効率化等の観点から、必要に応じ法改革に関する見直しや勧告等を行う。」

 

(note2) 刑法193条:公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note3) 刑法194条:裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note4) 「破壊活動防止法(昭和27年7月21日法律第240号)」(公安調査官の職権濫用の罪)

  •  公安調査官がその職権を濫用し、人をして義務のないことを行わせ、又は行うべき権利を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁こに処する。

 

(note5) 「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年12月7日法律第147号)」

(公安調査官の職権濫用の罪)

第42条  公安調査官がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

(警察職員の職権濫用の罪)

第43条  警察職員がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note6) 「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」

第30条 捜査又は調査の権限を有する公務員が、その捜査又は調査の職務に関し、電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第百七十九条第一項 又は有線電気通信法 (昭和二十八年法律第九十六号)第十四条第一項 の罪を犯したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

(note7) 小坂正則「基本的人権無視の警察国家体制が着実に先行実施されている」9/6(26)、

同「この国は「盗撮・盗聴」の暗黒社会が完成しつつある」9/6(27)が比較的詳しく論じている。ただし、より専門的な視点からの問題の指摘論文を期待したい。

 

(note8) 「コモンロー」の詳しい説明は省略するが、次の解説がわかりやすい。

衡平法とは、イギリスで大法官(Lord Chancellor)が与えた個別的救済が集積したことにより確立された法原則を意味する。エクイティ(equity)とも呼称される。英米判例法のうち、イギリスにおいて1875年まで存続した大法官裁判所(Court of Chancery)が定立した法であり、それ以降発達していったとされる。

 

沿革を下記に紹介する。

①イギリスでは古来からコモン・ロー裁判所による判決の集積である判例法をコモン・ローと呼称し、コモン・ローは民事、商事、刑事の分野で発展してきた。

②ところが、イギリスと欧州各国との交易が盛んになると、その厳格性からコモン・ローでは対応しきれない事案が登場し、新法分野である信託法に関する事案については、大法官が個別に救済を与えるという取扱いをすることとなった。

③コモン・ローが金銭賠償を民事上の救済方法とするのに対し、衡平法は、信託(trust)、特定履行(specific performance)、差止命令(injunction)など柔軟な救済方法を発達させていった。

 

沿革からわかる通り、衡平法はコモン・ローを補完し、法の具体的妥当性を実現する機能を有するものであるといえる。

 

なお、現在では、コモン・ローと衡平法の訴訟上の手続きはほぼ統一されているが、両者はいまだ別の法体系として存在している。(弁護士ドットコム「衡平法」9/6(31)から抜粋)

 

(note9) 1967年英国刑法第6条3項 9/6(22)の内容をあげておく。

 

  • Where, on a person’s trial on indictment for any offence except treason or murder, the jury find him not guilty of the offence specifically charged in the indictment, but the allegations in the indictment amount to or include (expressly or by implication) an allegation of another offence falling within the jurisdiction of the court of trial, the jury may find him guilty of that other offence or of an offence of which he could be found guilty on an indictment specifically charging that other offence.

 

(note10) CrownCourtの解説(「イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度」9/6(39)から一部抜粋)

正式起訴手続に係る刑事事件の第一審(ただし、必ず治安判事裁判所の予

備審問を経る、科刑のために治安判事裁判所から付託された事件の科刑手

。)

続及び治安判事裁判所の刑事事件に関する上訴審を管轄する。第一審として

は、中間的犯罪のうち被告人が陪審裁判を選択したときなど、及び全ての正

式起訴状による刑事事件(正式起訴事件)を取り扱い、被告人が争った場合

は、陪審制により裁判を行う。被告人が有罪の答弁をした場合には、陪審に

よることなく、直ちに量刑手続に移行することとなる。

 

 

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Copyright © 2006-2016 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author.

 

 

 

 

 

2016年9月5日に本委員会は、法改革のための選択肢を含む諮問書の公表をもって諮問手続きの第2段階を開始した。最終報告書は、2017年中に公表する予定である。

 

筆者が、この問題を取り上げた背景は、わが国でも同様の問題が大分県警のビデオ監視カメラ捜査事件で起きたからである。わが国では刑法193条で「公務員職権濫用罪」(note2)、同194条で「特別公務員職権濫用罪」(note3)が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条(note4)、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条(note5)、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条(note6)があげられる。

 

特に大分県警事件は、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に抵触するだけでなく、刑法194条にも関わる問題であろう。(note7)

 

法改革委員会の諮問書にも明記されている通り、役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

その意味で、この問題についての英国の取り組みの解析は、わが国においても他山の石とすべき問題と考える。

 

  • 法改革委員会の役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)の刑法上の検討の経緯

 

(1)初回の諮問等をめぐる経緯

「役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)に関する諮問文書1」

役所の職権濫用行為にかかる現行刑法の問題に関する検討の背景理由書面、すなわち代替犯罪(alternative offences) としてのギャップと重複問題と同様に、不確実性の領域で発生する問題を強調的に表示した。

 

本委員会は、著名なスピーカーと論議を行うシンポジュームとともに、2016年1月20日に「諮問文書1(Misconduct in Public Office: Issues Paper 1)」9/6⑨を発刊し、この問題の諮問フェーズを立ち上げた(我々は、その日からツィッターで内容を公開している)。この段階では、現在の法律とその問題点に焦点を当てた。同諮問文書とシンポジウムの目的は、特定の問題に基づいた議論を刺激するための機会を我々に提供し、同犯罪を実際扱う実務家や専門家と交流の場とするものである。

 

(2)本委員会のプロジェクト目的

本委員会の法改革の目標は、役所の職権濫用行為にかかる既存の犯罪を廃止、維持、修正再規定または改正する必要があるか否かの決定と、さらに改革のために何らかの手法を追求する点にある。

 

役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

 

(3)犯罪の定義とその問題点(The offence and its problems)

「役所の職権濫用」は、コモンロー(note8)上の犯罪であり、いかなる制定法にも定められていない。一方、その最高刑は終身拘禁刑(life imprisonment)である。その犯罪行為とは、公務員が公務員(office holder)に対する国民の信頼の濫用した程度において,合理的な釈明や正当化事由なし(without reasonable excuse or justification.)に、故意に自身の義務を怠りかつ/または故意に職権を濫用したことをいう。

 

歴史的に見て、公務員の違法行為を犯罪として考慮する他の適切な方法がなかった。今日、このような不正行為は一般に別の狭義でかつ明確に定義された刑事犯罪(criminal offence)に該当しよう。

 

この犯罪は、定義が曖昧で広く考えられており、また政府、控訴裁判所、メデイアや法学者によって最近批判の対象とされている。

社会統計では、有罪につながるそれらの告発が極めて少ない一方で、多くの人々は役所の職権濫用は起訴されるべきという点を示唆している。その1 つの可能な理由は、犯罪の明確な定義のない判決のつ言い渡しは困難であることである。

 

本委員会は、いくつかのこの問題にかかる「犯罪の定義」問題を、以下のとおり明確化した。

 

①「役所(Public office)」は、明確な定義を欠いているが、なお犯罪の重要な要素である。この曖昧さは、その犯罪の解釈・適用に重大な困難をもたらす。

 

②公職権者であるための義務の類型が十分に定義されていない。これらの特定の義務の違反を証明するために不可欠であるかどうかも、判例法上不明確である。

 

③「国民の信頼の濫用(abuse of the public trust)」が、この犯罪の成立判断の「しきい値要素」として重要な点である一方で、内容が曖昧で、捜査官(investigators)、検察官(prosecutors)、陪審員(juries)に適用するのが困難である。.

 

④犯罪を証明する必要な「違反の要素(fault element)」は、状況によって異なる。これらは、一般的でなく、無節操(unprincipled)な立場にある。

 

⑤「合理的な釈明や正当化事由がなく(without reasonable excuse or justification)」が犯罪の要素として明らかであったとしても、それは自立した防御または定義された要素として機能するかどうかは不明である。

 

  • 今回の諮問にかかる関連文書の一覧を添付する。なお、筆者の責任でリンクを貼った。

 

【添付文書】

① Reforming Misconduct in Public Office consultation PDF, 1MB (全224頁) 9/6⑤

② Reforming Misconduct in Public Office consultation summary PDF, 164kB (全19頁) 9/6⑥

③ Diwygio Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus Crynodeb PDF, 188kB (全20頁) 9/6⑦

④ Reforming Misconduct in Public Office Appendix PDF, 110kB (全10頁) 9/6⑧

⑤ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1 PDF, 748kB  9/6⑨

⑥ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Summary (English) PDF, 182kB 9/6⑩

⑦ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Materion Papur 1 – Y Gyfraithbresennol PDF, 168kB (全18頁)9/6⑪

⑧ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Overview (English) PDF, 69kB (全2頁)9/6⑫

⑨ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Papur Materion 1 – Y Gyfraith Ar Hyn O Bryd Trosolwg PDF, 72kB (全3頁)9/6⑬

Appendix A – History of the Offence of Misconduct in Public Office PDF, 260kB 9/6⑭

Appendix B – Misfeasance in Public Office (A Paper by Mark Aronson) PDF, 225kB 9/6⑮

Appendix C – Misconduct in Public Office and the ECHR PDF, 170kB 9/6⑯

Appendix D – Spreadsheets relating to Misconduct in Public Office PDF, 164kB 9/6 ⑰

Appendix E – Previous Reform Proposals PDF, 146kB 9/6⑱

Appendix F – International Comparisons PDF, 260kB 9/6 ⑲

 

  • 代替犯罪(alternative offense)にかかる起訴以外による陪審評決( Alternative

verdicts )9/6(22)の意義

英国内の資料を調べてみたが、これといった資料は見当たらなかった。以下の内容につき、自信はないが、参考までにまとめてみた。

 

「1967年刑法(Criminal Law Act 1977)」9/6(38)の第6条(3)項(note9)に従い、陪審は以下の場合、起訴に関して被告を代替犯罪(alternative offense)として有罪であるとする判決を下しうる。

①被告は、反逆罪(treason)または殺人罪(Murder)以外のいかなる犯罪に関する起訴に関して裁判にかけられうる。;

②陪審は、被告に対し起訴に基づく有罪であるとする評決は下さない。

③明白または暗に刑事法院(Crown Court) (note10) の管轄権に入るかまたは別の犯罪の起訴の申し立てによる。

 

略式起訴犯罪(刑法第40条の略式起訴犯罪(summary offense)が当てはまる)は、この定義に入るし、刑事裁判所によって判決を下されるかもしれない。同裁判所は、治安判事裁判所(magistrates court)の宣告権限に制約される。

 

実際に身体の傷害を引き起こす損傷(wounding)、暴行(assault)や身体の傷害を引き起こす人種的加重暴行(racially aggravated assault)や一般の加重暴行が、代替評決の考慮に至るかもしれない最も明らかなものであるが、他方で性犯罪や暴力を伴う暴行についても考慮することも重要である。

 

  • わが国の刑法193条等や特別刑法等で見る公務員職権濫用罪に関する厳格な運用上の課題

わが国では、刑法193条で「公務員職権濫用罪」、同194条で「特別公務員職権濫用罪」が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条があげられる。

 

他方、その運用の厳格性はどのように担保されていると考えるべきか。京都産業大学准教授の深尾正樹氏9/6(34)の論文や昭和57年1月28日公務員職権濫用に関する最高裁判決9/6(33)、昭和54年12月26日の公務員職権濫用被告事件の東京高裁判決9/6(35)等材料は多い。

しかし、より運用面の取り組むべき課題は多いと考える。法務省・人権養護推進審議会資料「主な人権侵害類型と被害者の救済にかかわる制度等」9/6(37)を見ておく。

「公権力による侵害の項目で「*拘禁施設内における人権侵害等は,その密室性により発覚しにくい場合があり,立証・資料収集が困難であるとの指摘がある。

*内部監査・監察においては,必ずしも正確な調査と情報開示が期待できない場合があるとの指摘がある。」というコメントがある。

この議論は入り口論のみと思うのは筆者だけであろうか。

 

******************************************************************:

(note1)「Law Commission」を「法改革委員会」と訳すのはおそらく筆者のみであろう。その理由は筆者のブログ「英国法務省の「検死官規則(Coroners Rules 1984)」の一部改正の背景と司法改革の観点からみた意義」9/6(24)を参照してほしい。

なお、Law Commissionサイトで基本的な役割を見ておく。「法改革委員会は1965年「法改革委員会法」9/6(30)に基づき創設された独立制定法機関であり、公正、近代化、単純化および費用面の効率化等の観点から、必要に応じ法改革に関する見直しや勧告等を行う。」

 

(note2) 刑法193条:公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note3) 刑法194条:裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note4) 「破壊活動防止法(昭和27年7月21日法律第240号)」(公安調査官の職権濫用の罪)

  •  公安調査官がその職権を濫用し、人をして義務のないことを行わせ、又は行うべき権利を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁こに処する。

 

(note5) 「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年12月7日法律第147号)」

(公安調査官の職権濫用の罪)

第42条  公安調査官がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

(警察職員の職権濫用の罪)

第43条  警察職員がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note6) 「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」

第30条 捜査又は調査の権限を有する公務員が、その捜査又は調査の職務に関し、電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第百七十九条第一項 又は有線電気通信法 (昭和二十八年法律第九十六号)第十四条第一項 の罪を犯したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

(note7) 小坂正則「基本的人権無視の警察国家体制が着実に先行実施されている」9/6(26)、

同「この国は「盗撮・盗聴」の暗黒社会が完成しつつある」9/6(27)が比較的詳しく論じている。ただし、より専門的な視点からの問題の指摘論文を期待したい。

 

(note8) 「コモンロー」の詳しい説明は省略するが、次の解説がわかりやすい。

衡平法とは、イギリスで大法官(Lord Chancellor)が与えた個別的救済が集積したことにより確立された法原則を意味する。エクイティ(equity)とも呼称される。英米判例法のうち、イギリスにおいて1875年まで存続した大法官裁判所(Court of Chancery)が定立した法であり、それ以降発達していったとされる。

 

沿革を下記に紹介する。

①イギリスでは古来からコモン・ロー裁判所による判決の集積である判例法をコモン・ローと呼称し、コモン・ローは民事、商事、刑事の分野で発展してきた。

②ところが、イギリスと欧州各国との交易が盛んになると、その厳格性からコモン・ローでは対応しきれない事案が登場し、新法分野である信託法に関する事案については、大法官が個別に救済を与えるという取扱いをすることとなった。

③コモン・ローが金銭賠償を民事上の救済方法とするのに対し、衡平法は、信託(trust)、特定履行(specific performance)、差止命令(injunction)など柔軟な救済方法を発達させていった。

 

沿革からわかる通り、衡平法はコモン・ローを補完し、法の具体的妥当性を実現する機能を有するものであるといえる。

 

なお、現在では、コモン・ローと衡平法の訴訟上の手続きはほぼ統一されているが、両者はいまだ別の法体系として存在している。(弁護士ドットコム「衡平法」9/6(31)から抜粋)

 

(note9) 1967年英国刑法第6条3項 9/6(22)の内容をあげておく。

 

  • Where, on a person’s trial on indictment for any offence except treason or murder, the jury find him not guilty of the offence specifically charged in the indictment, but the allegations in the indictment amount to or include (expressly or by implication) an allegation of another offence falling within the jurisdiction of the court of trial, the jury may find him guilty of that other offence or of an offence of which he could be found guilty on an indictment specifically charging that other offence.

 

(note10) CrownCourtの解説(「イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度」9/6(39)から一部抜粋)

正式起訴手続に係る刑事事件の第一審(ただし、必ず治安判事裁判所の予

備審問を経る、科刑のために治安判事裁判所から付託された事件の科刑手

。)

続及び治安判事裁判所の刑事事件に関する上訴審を管轄する。第一審として

は、中間的犯罪のうち被告人が陪審裁判を選択したときなど、及び全ての正

式起訴状による刑事事件(正式起訴事件)を取り扱い、被告人が争った場合

は、陪審制により裁判を行う。被告人が有罪の答弁をした場合には、陪審に

よることなく、直ちに量刑手続に移行することとなる。

 

 

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Copyright © 2006-2016 平野龍冶(Ryuji Hirano).All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means, including electronic, mechanical, photocopying, recording, or otherwise, without prior written permission of the author.

 

 

2016年9月5日に本委員会は、法改革のための選択肢を含む諮問書の公表をもって諮問手続きの第2段階を開始した。最終報告書は、2017年中に公表する予定である。

 

筆者が、この問題を取り上げた背景は、わが国でも同様の問題が大分県警のビデオ監視カメラ捜査事件で起きたからである。わが国では刑法193条で「公務員職権濫用罪」(note2)、同194条で「特別公務員職権濫用罪」(note3)が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条(note4)、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条(note5)、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条(note6)があげられる。

 

特に大分県警事件は、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に抵触するだけでなく、刑法194条にも関わる問題であろう。(note7)

 

法改革委員会の諮問書にも明記されている通り、役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

その意味で、この問題についての英国の取り組みの解析は、わが国においても他山の石とすべき問題と考える。

 

  • 法改革委員会の役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)の刑法上の検討の経緯

 

(1)初回の諮問等をめぐる経緯

「役所の職権濫用行為(Misconduct in Public Office)に関する諮問文書1」

役所の職権濫用行為にかかる現行刑法の問題に関する検討の背景理由書面、すなわち代替犯罪(alternative offences) としてのギャップと重複問題と同様に、不確実性の領域で発生する問題を強調的に表示した。

 

本委員会は、著名なスピーカーと論議を行うシンポジュームとともに、2016年1月20日に「諮問文書1(Misconduct in Public Office: Issues Paper 1)」9/6⑨を発刊し、この問題の諮問フェーズを立ち上げた(我々は、その日からツィッターで内容を公開している)。この段階では、現在の法律とその問題点に焦点を当てた。同諮問文書とシンポジウムの目的は、特定の問題に基づいた議論を刺激するための機会を我々に提供し、同犯罪を実際扱う実務家や専門家と交流の場とするものである。

 

(2)本委員会のプロジェクト目的

本委員会の法改革の目標は、役所の職権濫用行為にかかる既存の犯罪を廃止、維持、修正再規定または改正する必要があるか否かの決定と、さらに改革のために何らかの手法を追求する点にある。

 

役所の職権濫用犯罪に関連する法的概念は、複雑かつ高度な技術を必要とし、非法律家にとって容易にアクセスできない問題である。さらに多くの場合、法がどのように規定し、どのように適用するかなどにつき多くの混乱を生じる。刑事責任の適切な境界線の問題といえる公務員職権濫用の問題は、明らかに広範な公共の利益の問題である。

 

(3)犯罪の定義とその問題点(The offence and its problems)

「役所の職権濫用」は、コモンロー(note8)上の犯罪であり、いかなる制定法にも定められていない。一方、その最高刑は終身拘禁刑(life imprisonment)である。その犯罪行為とは、公務員が公務員(office holder)に対する国民の信頼の濫用した程度において,合理的な釈明や正当化事由なし(without reasonable excuse or justification.)に、故意に自身の義務を怠りかつ/または故意に職権を濫用したことをいう。

 

歴史的に見て、公務員の違法行為を犯罪として考慮する他の適切な方法がなかった。今日、このような不正行為は一般に別の狭義でかつ明確に定義された刑事犯罪(criminal offence)に該当しよう。

 

この犯罪は、定義が曖昧で広く考えられており、また政府、控訴裁判所、メデイアや法学者によって最近批判の対象とされている。

社会統計では、有罪につながるそれらの告発が極めて少ない一方で、多くの人々は役所の職権濫用は起訴されるべきという点を示唆している。その1 つの可能な理由は、犯罪の明確な定義のない判決のつ言い渡しは困難であることである。

 

本委員会は、いくつかのこの問題にかかる「犯罪の定義」問題を、以下のとおり明確化した。

 

①「役所(Public office)」は、明確な定義を欠いているが、なお犯罪の重要な要素である。この曖昧さは、その犯罪の解釈・適用に重大な困難をもたらす。

 

②公職権者であるための義務の類型が十分に定義されていない。これらの特定の義務の違反を証明するために不可欠であるかどうかも、判例法上不明確である。

 

③「国民の信頼の濫用(abuse of the public trust)」が、この犯罪の成立判断の「しきい値要素」として重要な点である一方で、内容が曖昧で、捜査官(investigators)、検察官(prosecutors)、陪審員(juries)に適用するのが困難である。.

 

④犯罪を証明する必要な「違反の要素(fault element)」は、状況によって異なる。これらは、一般的でなく、無節操(unprincipled)な立場にある。

 

⑤「合理的な釈明や正当化事由がなく(without reasonable excuse or justification)」が犯罪の要素として明らかであったとしても、それは自立した防御または定義された要素として機能するかどうかは不明である。

 

  • 今回の諮問にかかる関連文書の一覧を添付する。なお、筆者の責任でリンクを貼った。

 

【添付文書】

① Reforming Misconduct in Public Office consultation PDF, 1MB (全224頁) 9/6⑤

② Reforming Misconduct in Public Office consultation summary PDF, 164kB (全19頁) 9/6⑥

③ Diwygio Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus Crynodeb PDF, 188kB (全20頁) 9/6⑦

④ Reforming Misconduct in Public Office Appendix PDF, 110kB (全10頁) 9/6⑧

⑤ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1 PDF, 748kB  9/6⑨

⑥ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Summary (English) PDF, 182kB 9/6⑩

⑦ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Materion Papur 1 – Y Gyfraithbresennol PDF, 168kB (全18頁)9/6⑪

⑧ Misconduct in Public Office – Issues Paper 1: Overview (English) PDF, 69kB (全2頁)9/6⑫

⑨ Camymddwyn Mewn Swydd Gyhoeddus: Papur Materion 1 – Y Gyfraith Ar Hyn O Bryd Trosolwg PDF, 72kB (全3頁)9/6⑬

Appendix A – History of the Offence of Misconduct in Public Office PDF, 260kB 9/6⑭

Appendix B – Misfeasance in Public Office (A Paper by Mark Aronson) PDF, 225kB 9/6⑮

Appendix C – Misconduct in Public Office and the ECHR PDF, 170kB 9/6⑯

Appendix D – Spreadsheets relating to Misconduct in Public Office PDF, 164kB 9/6 ⑰

Appendix E – Previous Reform Proposals PDF, 146kB 9/6⑱

Appendix F – International Comparisons PDF, 260kB 9/6 ⑲

 

  • 代替犯罪(alternative offense)にかかる起訴以外による陪審評決( Alternative

verdicts )9/6(22)の意義

英国内の資料を調べてみたが、これといった資料は見当たらなかった。以下の内容につき、自信はないが、参考までにまとめてみた。

 

「1967年刑法(Criminal Law Act 1977)」9/6(38)の第6条(3)項(note9)に従い、陪審は以下の場合、起訴に関して被告を代替犯罪(alternative offense)として有罪であるとする判決を下しうる。

①被告は、反逆罪(treason)または殺人罪(Murder)以外のいかなる犯罪に関する起訴に関して裁判にかけられうる。;

②陪審は、被告に対し起訴に基づく有罪であるとする評決は下さない。

③明白または暗に刑事法院(Crown Court) (note10) の管轄権に入るかまたは別の犯罪の起訴の申し立てによる。

 

略式起訴犯罪(刑法第40条の略式起訴犯罪(summary offense)が当てはまる)は、この定義に入るし、刑事裁判所によって判決を下されるかもしれない。同裁判所は、治安判事裁判所(magistrates court)の宣告権限に制約される。

 

実際に身体の傷害を引き起こす損傷(wounding)、暴行(assault)や身体の傷害を引き起こす人種的加重暴行(racially aggravated assault)や一般の加重暴行が、代替評決の考慮に至るかもしれない最も明らかなものであるが、他方で性犯罪や暴力を伴う暴行についても考慮することも重要である。

 

  • わが国の刑法193条等や特別刑法等で見る公務員職権濫用罪に関する厳格な運用上の課題

わが国では、刑法193条で「公務員職権濫用罪」、同194条で「特別公務員職権濫用罪」が明記されているし、また特別刑法である「破壊活動防止法」45条、サリン事件などに対応した「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」42条・43条、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」30条があげられる。

 

他方、その運用の厳格性はどのように担保されていると考えるべきか。京都産業大学准教授の深尾正樹氏9/6(34)の論文や昭和57年1月28日公務員職権濫用に関する最高裁判決9/6(33)、昭和54年12月26日の公務員職権濫用被告事件の東京高裁判決9/6(35)等材料は多い。

しかし、より運用面の取り組むべき課題は多いと考える。法務省・人権養護推進審議会資料「主な人権侵害類型と被害者の救済にかかわる制度等」9/6(37)を見ておく。

「公権力による侵害の項目で「*拘禁施設内における人権侵害等は,その密室性により発覚しにくい場合があり,立証・資料収集が困難であるとの指摘がある。

*内部監査・監察においては,必ずしも正確な調査と情報開示が期待できない場合があるとの指摘がある。」というコメントがある。

この議論は入り口論のみと思うのは筆者だけであろうか。

 

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(note1)「Law Commission」を「法改革委員会」と訳すのはおそらく筆者のみであろう。その理由は筆者のブログ「英国法務省の「検死官規則(Coroners Rules 1984)」の一部改正の背景と司法改革の観点からみた意義」9/6(24)を参照してほしい。

なお、Law Commissionサイトで基本的な役割を見ておく。「法改革委員会は1965年「法改革委員会法」9/6(30)に基づき創設された独立制定法機関であり、公正、近代化、単純化および費用面の効率化等の観点から、必要に応じ法改革に関する見直しや勧告等を行う。」

 

(note2) 刑法193条:公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note3) 刑法194条:裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note4) 「破壊活動防止法(昭和27年7月21日法律第240号)」(公安調査官の職権濫用の罪)

  •  公安調査官がその職権を濫用し、人をして義務のないことを行わせ、又は行うべき権利を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁こに処する。

 

(note5) 「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年12月7日法律第147号)」

(公安調査官の職権濫用の罪)

第42条  公安調査官がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

(警察職員の職権濫用の罪)

第43条  警察職員がこの法律に定める職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁錮に処する。

 

(note6) 「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成11年8月18日法律第137号)」

第30条 捜査又は調査の権限を有する公務員が、その捜査又は調査の職務に関し、電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第百七十九条第一項 又は有線電気通信法 (昭和二十八年法律第九十六号)第十四条第一項 の罪を犯したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

(note7) 小坂正則「基本的人権無視の警察国家体制が着実に先行実施されている」9/6(26)、

同「この国は「盗撮・盗聴」の暗黒社会が完成しつつある」9/6(27)が比較的詳しく論じている。ただし、より専門的な視点からの問題の指摘論文を期待したい。

 

(note8) 「コモンロー」の詳しい説明は省略するが、次の解説がわかりやすい。

衡平法とは、イギリスで大法官(Lord Chancellor)が与えた個別的救済が集積したことにより確立された法原則を意味する。エクイティ(equity)とも呼称される。英米判例法のうち、イギリスにおいて1875年まで存続した大法官裁判所(Court of Chancery)が定立した法であり、それ以降発達していったとされる。

 

沿革を下記に紹介する。

①イギリスでは古来からコモン・ロー裁判所による判決の集積である判例法をコモン・ローと呼称し、コモン・ローは民事、商事、刑事の分野で発展してきた。

②ところが、イギリスと欧州各国との交易が盛んになると、その厳格性からコモン・ローでは対応しきれない事案が登場し、新法分野である信託法に関する事案については、大法官が個別に救済を与えるという取扱いをすることとなった。

③コモン・ローが金銭賠償を民事上の救済方法とするのに対し、衡平法は、信託(trust)、特定履行(specific performance)、差止命令(injunction)など柔軟な救済方法を発達させていった。

 

沿革からわかる通り、衡平法はコモン・ローを補完し、法の具体的妥当性を実現する機能を有するものであるといえる。

 

なお、現在では、コモン・ローと衡平法の訴訟上の手続きはほぼ統一されているが、両者はいまだ別の法体系として存在している。(弁護士ドットコム「衡平法」9/6(31)から抜粋)

 

(note9) 1967年英国刑法第6条3項 9/6(22)の内容をあげておく。

 

  • Where, on a person’s trial on indictment for any offence except treason or murder, the jury find him not guilty of the offence specifically charged in the indictment, but the allegations in the indictment amount to or include (expressly or by implication) an allegation of another offence falling within the jurisdiction of the court of trial, the jury may find him guilty of that other offence or of an offence of which he could be found guilty on an indictment specifically charging that other offence.

 

(note10) CrownCourtの解説(「イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度」9/6(39)から一部抜粋)

正式起訴手続に係る刑事事件の第一審(ただし、必ず治安判事裁判所の予

備審問を経る、科刑のために治安判事裁判所から付託された事件の科刑手

。)

続及び治安判事裁判所の刑事事件に関する上訴審を管轄する。第一審として

は、中間的犯罪のうち被告人が陪審裁判を選択したときなど、及び全ての正

式起訴状による刑事事件(正式起訴事件)を取り扱い、被告人が争った場合

は、陪審制により裁判を行う。被告人が有罪の答弁をした場合には、陪審に

よることなく、直ちに量刑手続に移行することとなる。

 

 

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